先日、取材でお伺いした弘前市の「三忠食堂」。 津軽の地で知恵と工夫によって生まれた伝承料理・津軽そばを提供するこのお店が、大正8年から続けているのが弘前さくらまつりへの出店。
ということで桜満開のある日の午後、弘前に足を運んできました。
お堀に始まって、広場に通じるまでの道すべてがピンク色に染まった弘前公園内。
賑やかでおだやかな空間の中で確かに目を惹くこの看板。褪せた色合いと風格のある人物画が、年季を感じさせます。
入口右手のカウンターで食券を買ったら、空いている座敷席かテーブル席に座るのですが、「津軽そば、ありますか?」「はい、ありますよ」。このやり取りが終わるまでは、ちょっとドキドキです。
その他のメニューですが、いつもと違ってカレーライスや丼ものはありません。ただ、代わりに店頭で焼くやきとり、おでん、そして「つぶ ニケ」の文字が加わります。
そして、すごいのがアルミパイプを組み上げた小屋の中で仕事をする人の数。
普段は、三千男さんや奥さんのけい子さん、そして五代目の卓也さんが中心になって、出前を含めて少人数で回していますが、そこに加わるのが大勢の学生アルバイトさん。
食券を受け取ったり料理を運んだり、看板をデザインした特製のTシャツを身にまとって大活躍です。
まずは、おでんから。 厚い大根に、薄切りのこんにゃく、練り物、結びしらたき、玉子といった定番具材の上に盛られた、根曲がり竹が津軽らしさのアクセント。
しっかり味が染みこんだ旨さは、ビールとの相性抜群です!
そして、醤油仕立ての味付けで煮こまれたつぶ貝が、串に刺さって登場です。
くるんと殻から身を取り出して頬張れば、コリコリむにゅむにゅの身の弾力とワタの濃厚なコク。貝一つだけでフルコースを食べたような食後感です。
そして、お待ちかねの津軽そば。おつゆの中にたっぷり溶けこむ焼き干しの旨みと、ふつふつとしたそばの舌触り。やっぱりこれが欠かせません!
実は、隣のテーブルに座ったのが中国からのお客様。メニューがわかるのだろうか…?と思いきや、簡単な中国語メニューが置かれていました。中華そばにたっぷりと唐辛子をふりかけて食べる男性と、不思議そうに津軽そばを食べる女性。でも、おつゆを飲んだ瞬間に顔がほころぶのは同じでした。
長きに渡って実直に作られたこの味が全世界に飛び出して、“Tsugaru-Soba”が世界語になる日も遠くないのかもしれません。
※三忠食堂を紹介した記事本編は下のリンクからご覧ください。